貴ノ花が亡くなった

 元大関貴ノ花の二子山親方が、5月30日に死去した。享年55歳。
 呆然としている。
 自分を構成していたものの一部がはぎ取られたような気分だ。

 私がタカノハナと言えば、この昭和の名大関貴ノ花だ。平成の横綱貴乃花は「息子のほう」である。
 貴ノ花は子供のころ私のヒーローだった。
 私が貴ノ花を好きになったのは、大関昇進以前である。
 軽量で、立ち合いでよく吹っ飛ばされた。
 そこからの粘り腰。俵に足がかかってからの逆転相撲が多かった。「かかとに目がある」と言われた。そこに惹き付けられた。
 一方で、富士桜・黒姫山といった押し相撲、高見山のような巨漢には弱かった。

 大関になってからの印象はあまり良くない。「クンロク大関」と呼ばれ、ようやく勝ち越すことが多かったからだ。
 二度優勝し、翌場所に横綱の期待がもたれたが、私は無理だろうと思っていた。普段9勝6敗の力士がたまさか優勝したからと言って強運がそうは続かないだろうと。応援しているのに嫌なところが冷静なガキだ。

 子供の頃に好きな力士が亡くなった、というのは、相撲をよく見ていた自分がかき消されたような心地がする。
 手塚治虫、藤子・F・不二雄、ジャイアント馬場。そんな気持ちになった故人はそう多くはない。

 冥福を祈るのみである。合掌。

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