占いを信じれば

 占いは信じた人に当たりやすい、という話がある。信じた人は、その占いの通りに人生を歩もうとするからだ。

 ここにある女性がいたとする。彼女は占いで「28歳で結婚する」と言われ、それを真剣に信じた。
 ならば彼女は占いの通り、28歳で結婚するように人生を過ごすことになる。
 25歳で男性と付き合う。3年後に結婚かな、と思う。ところが1年後にプロポーズされた。まだ26歳だ。当然、このプロポーズは受けられない。自分は28歳で幸せな結婚をする運命だからだ。
「まだ、早いと思うの」
 男は納得しない。結局別れてしまった。

 彼女は後悔などしない。彼は運命の人ではなかったのだ。
 まだ結婚には早い。好みの男性と話してもなんとなく気合いが入らない。そんな日々が続く。

 そうこうするうちに28歳の誕生日が来た。
 いよいよだ。この一年間のうちに自分は結婚するのだ。男性を見る目が積極的になる。邪険にしていた見合い話にも積極的に乗り出すようになった。
 幸せな結婚式はもうすぐだと思う。

 そして、

 29歳の誕生日の前日、彼女はこう呟くのだ。
「あの占い、当たらなかったな」
と。

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