吉田秋生「海街diary1 蝉時雨のやむ頃」 小学館フラワーコミックス

 サッカー漫画なら何でも読む、という人でも、ひょっとしたら見逃しているかもしれません。少女漫画として普通に売られているからです。
 でもこの本の第3話目「二階堂の鬼」にサッカーシーンがあります。

 もともと吉田秋生はサッカーに造詣が深い漫画家さんです。

吉田 ……、やっぱりJリーグが始まってからのファンだということにしておきましょう。
真野匡 カトリーヌあやこ なかはら・ももた著「ミーハーサッカー2002」内の対談から

という発言があるくらい、古くからのサッカーファンです。

 漫画自体は
「父ちゃんが浮気して女と出て行って、しばらくしたら母ちゃんが男と出て行って、鎌倉で祖母と暮らしていた三姉妹。婆さんも亡くなって三人暮らしのところに、唐突に父親が亡くなったという知らせが山形から届く。山形に行ってみたらそこに腹違いの妹が」
という出だしで、向田邦子か柴門ふみかと思いました。
 だいたい吉田秋生は、主人公の女の子にお父さんとお母さんが揃っていて、優しい兄だの生意気な弟だのがいて、平凡だけどちょっと幸せな毎日、そこに素敵な男の子が現れて、……みたいな少女漫画は描きません。主人公の家族はたいてい壊れているか、壊れていなければ隠れて出てこない。この漫画もすでに壊れたあとの家族から始まっています。
 家族の解体と再生の感動物語なんだそうです。

 それはさておき。
 腹違いの妹が鎌倉にやってきて第3話。この娘が

仙台の青葉JFCでレギュラー
去年のジュニア優勝チームじゃん


ということで、鎌倉のジュニアユース(男女混成チーム)に入ってサッカーをします。
 フィクションとはいえ、仙台のサッカーチームがジュニア優勝なんて嬉しいですね(←これが書きたかった)。

 ただ、サッカーシーンがあるとはいっても、サッカーはあくまで舞台回しの道具であり、第3話に書かれた主題は少年少女の心の機微です。

 さて、そのサッカーシーンにQBK(急にボールが来たので)の描写があります。
 少年少女ジュニアユースでQBKをどう表現したか、興味のあるかたは読んでみて下さい。

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