ヤクルトスワローズ優勝

 私はヤクルトスワローズのファンなのだが、普段はそれほど熱心なファンではない。ヤクルトが優勝しそうだな、と思った時だけ熱心になる。
 前年は最下位。そして今年のヤクルトは阪神戦の3連敗から始まった。当然、ヤクルトが優勝するなどと思ってはいなかった。
 優勝する可能性がありそうだ、と思ったのは9月に入ってからだ。高津監督が「絶対大丈夫」と選手の前で話したのが9月7日。ちょうどその頃から熱心に見るようになった。

 今年は阪神が序盤から首位に立っていた。それがヤクルトに抜かれたのだから、阪神が勝てなくなったのか、と思いがちだがそうでもない。阪神の貯金は6月下旬以降、およそ15くらいで減らずに推移している。ヤクルトが9月14日から28日まで引き分け4試合を挟んで9連勝とか、10月1日から8日まで7連勝とか、無茶苦茶な勝ち方をしたので順位がひっくり返ったのである。
 実はその10月のヤクルトよりも10月の阪神のほうが強かった。ヤクルトにマジックが点灯してからなかなか減らなかったのは、ヤクルトが負けていたことよりも阪神が負けなかったことが大きい。ヤクルトが優勝したので高津監督を持ち上げて矢野監督を貶す向きがあるようだが、阪神も一年間を通して相当強かったので違和感がある。秋から敗退し続けた巨人の原監督を貶すならわかるのだが。

 巨人は秋から先発ピッチャーを中4日、中5日で回して敗戦を続けた。原監督が現役だった頃は中4日、中5日は不思議なことではなかった。大昔は権藤権藤雨権藤などという時代もあった。時代は先発ピッチャーの間隔を空ける方向に推移してきた。それにはもちろん人間工学的な知見があったのだろう。
 もうひとつ思うのは、週に一回しか先発で投げないことが習慣化すると、体にそのリズムが出来るのだろうということだ。一度、週に一回だけ投げることが習慣化すると、それを破った時に心理的身体的な負担が大きくかかるのだろうなと想像する。

 高津監督は投手を大事に使ったと言われる。その高津監督にしても、10月5日~10日の対巨人・対阪神6連戦の時は、先発中5日、リリーフ4連投をぶつけてきた。この6日間でヤクルトは5勝1敗とし、優勝戦線で優位に立った。
 その6日間で無理をした反動が10月中旬から下旬にかけて出たのではないかと想像している。先発の石川・小川・奥川が打たれ、中継ぎの今野(岩出山高校出身)が踏ん張れなくなった。
 10月21日、対広島7-11の敗戦は塩見のエラーばかりが取りざたされるが、田口とスアレスが打たれたことを忘れてはならない。あの日は4回で小川が引っ込み、中継ぎに負担がかかっていた。田口は回跨ぎ。スアレスはリリーフに転向して何度も登板していた頃だ。どこかで無理をすれはどこかで軋みが出る。

 優勝が決定したのは10月26日。先発は高梨。高梨で大丈夫か、と多くのヤクルトファンが心配していた。高梨はボールが高めに浮いていて、始めは危なっかしかった。
 同時進行で阪神の様子も見ていた。阪神先発の青柳はボールが先行することが多く、中日に付け入るスキがあるように思えた。中日が1点先制した所で青柳を引っ込めたのには驚いた。だが阪神ベンチからは高梨以上に危なく見えたのかもしれない。
 ヤクルトが安定してきたように見えた高梨を4回で引っ込めたのにも驚いた。初回から飛ばしていたからこの辺りが頃合いと見たのだろうか。それにしても高橋が6回から出てきたのにはもっと驚いた。
 高橋が打たれたらどうするんだろう、と心配になった。打たれて負けたら残り広島2戦は誰が先発するのか。奥川と小川か。直近では打たれて二人とも敗戦投手になっている。だいたい先発ピッチャーをリリーフに回すのは、慣れていないことをやらせるという意味で博打だ。
 高津監督は博打に勝った。そして青柳を早々に交代させた矢野監督は敗れた。私はこの日の采配だけをもって二人を判断したくない。優勝争いは一年を通してやるものだから、一年を通して批評するものだろう。青柳を交代させた後に阪神が逆転勝ちし、高橋が打たれてヤクルトが負けたら、マスコミはどう書いていたのだろう。

 ヤクルトファンの私はもちろん優勝を喜んでいるのだが、26日は同時に様々なことも考えた一日だった。
 高津が現役だった頃のほうがヤクルトの試合はよく見ていた。当時の高津の投げる姿のみならず、投げていない時の映像も見ている。現役時代はわりとおちゃらけた所があって、その後、優勝監督になるなどと想像したことはなかった。時は過ぎゆく季節は変わる。楽天では石井一久が監督をしている。高津よりもそちらが驚きか。

 最後に横浜DeNAベイスターズに感謝したい。10月26日の試合はベイスターズの本拠地最終戦で、当然本拠地最終戦にはセレモニーがある。それなのに球場で阪神-中日戦の試合を流し、ヤクルト優勝の胴上げや監督インタビューを先行させてくれた。さらに三浦監督は挨拶で
「まずはヤクルトスワローズファンの皆様、優勝おめでとうございます」
と言った。
 ヤクルトスワローズファンの一人として御礼申し上げる。ありがとうございました。

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