ワールドカップのアディッショナルタイム

 今回のカタールワールドカップではアディッショナルタイムが長いと話題になった。これまで後半のアディッショナルタイムといえば、3分~5分くらいだった。それがW杯では5分~10分くらいと長かったのである。
 プレーしていない時間を正確に反映するとそうした時間になるらしい。

 前半は痛んでいる選手などのアクシデントが無ければ2~3分くらいでそれまでの試合と大差なかった。後半で増えていた場合が多かったので、選手交代の時間を正確に測定したのだろうと思われる。
 以前、現技術委員長の反町氏が監督だった頃、「勝っている時は二人を同時交代させることはない」と言ったと聞いたことがある。なぜかというと、交代の度に一分は稼げるからだそうだ。交代枠が三名だった頃の話だ。だから三度の交代で三分稼げる。
 つまり、選手交代は時間稼ぎに有効で、交代時間はアディッショナルタイムとして正確に加算されてはいなかった、という話である。
 選手交代に1分かかったとして、両チームが3回ずつ交代したらそれだけで6分間になる。30秒でも3分間だ。これまで選手交代の時間をアディッショナルタイムに含めていなかったが、今回のW杯で正確に加算することにした、ということであれば、おおよそのつじつまは合う。
 これまでの試合を思い返してみると、痛がったふりをする時間稼ぎも正確に反映されていなかったのではないか。つまり、こうした時間稼ぎは勝っている側としては有効だったのだ。

 今回のW杯では、交代時にあえてゆっくり歩くことや、わざとらしく痛がって転がる行為が明らかに減少した。アディッショナルタイムが正確に反映されるのであれば、交代はとっとと行うことになるし、本当に痛いときだけ倒れていればよい。見る側としては大いに歓迎である。時間稼ぎを見たくてサッカーを観ているわけではないからだ。

 さて、それでは今までのアディッショナルタイムは何だったのか、という話が残る。これまでのは正確ではなかったということだ。
 アディッショナルタイムは第四の審判が時間を提案し、主審がそれよりもう一分多いあるいは二分少ない、などと返して決まる、と聞いている。これまでは交代時間やインジュリータイムを正確に測らずに、それより短い時間が提案され、それが認められてきたということだろう。
 なぜだろうか。
 なぜ勝っている側の時間稼ぎが有効だったのだろう。

 審判たちは仕事をさっさと終えたかったのだ。早く帰りたかった。だから時間稼ぎも見て見ぬふりをしてきた。そう解釈せざるを得ない。

 もちろん私は今回のW杯が今後の指針になることを望んでいる。

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