木曜映画サイト 「東京日和」竹中直人が好きなもの

 まず映画の「東京日和」を先に見た。監督竹中直人。主役は中山美穂と竹中直人。1997年。
 その次に本の「東京日和」を読んだ。荒木陽子+経雄著。1993年。

 本の「東京日和」は荒木陽子の随筆で始まる。「思想の科学」連載の随筆「東京日和」3本と、「ON THE LINE」に掲載された1本。秀逸な随筆でありもっと続きを読みたかったが、荒木陽子は1990年に52歳で亡くなっている。本の残りの部分は、荒木経雄の写真と肉筆日記で構成されている。

 本の「東京日和」が映画「東京日和」の原作だということになっている。だが、この二作の間に関係はあまりない。妻の呼び名が「ヨーコ」であること、二人が東京を共に歩くこと、本にある柳川の舟で寝る陽子と同じポーズで寝る中山美穂の場面、そして映画の「ヨーコ」も長生きすることなく病気で亡くなってしまうこと。それぐらいしか共通点がない。
 主人公の写真家の名前が島津巳喜男(島津保次郎+成瀬巳喜男)で、まずそこから違う。
 本の「東京日和」が無ければ映画「東京日和」は無かっただろう。ただ、竹中直人は本に触発されてはいるものの、その本からはある程度離れてこの映画を撮っている。

 映画「東京日和」は竹中直人が好きなもので成り立っている。
 東京の風景にこれほど絵になるものが沢山あるのだな、ということがまず驚きだった。竹中直人はその東京の風景を撮っていく。そこに人物を配していく。
 この映画には塚本晋也、周防正行、森田芳光、そして中島みゆき等が短い時間ながら出演し、荒木経雄本人もカメオ出演している。この人たちも恐らく、竹中直人が大好きな人々なのであろう。

 そして中山美穂を妻役に向かえた竹中直人は、画面の中でとにかく嬉しそうだった。
 俺の妻役が中山美穂なんだぜぇ、とにかくこの中山美穂を美しく撮ってやるぜぇ、それが嬉しくて仕方がないのである。
 映画の中では、写真家である島津巳喜男のほうが常識人で、旅行代理店で働いているヨーコのほうがエキセントリックだった。ヨーコが巳喜男を振り回しているのだ。
 それがどうも、俺は中山美穂のような女に振り回されたいんだぁー、という竹中直人の願望に見えてくるのである。

 というわけで美女に振り回されたい人は是非、という映画である。
 美しい東京、美しい柳川を見たい人も是非。

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