木曜映画サイト ホラーではなかった「ヴァチカンのエクソシスト」

 以前にも書いたが、私はホラー映画は苦手だ。なぜ金を出して恐い思いをしなければならないのか、負の感情をかきたてなければならないのか、理解に苦しむ。
 ところがサスペンス映画は好きだったりする。刺激的なドキドキワクワクは良い。ヒッチコックで言うなら「サイコ」は好きだが、「鳥」は苦手だ。

 私が初めて観たホラー映画は「エクソシスト」だった。1973年。実はこれが全然恐くなかった。余りにも有名な映画で、鳴り物入りで日本に来て盛んにストーリーを事細かに喧伝されたのだ。観る以前に私はすっかり内容を知ってしまっていた。「えっと、ここで聖水をふりかけるんだよね」などと思いながら観てしまったので、驚いたのは首が回った場面だけだった。不意打ちのないホラーは恐くない。
 ホラーが苦手になったのは、最初に観たホラー映画で恐い思いをしなかったからかもしれない。
 それ以後、ホラー映画はあまり観ていない。「サスペリア(1977)」はテレビで観た。盲導犬の場面が最も印象に残っている。部分的に恐かったが、決して一人では見ないでください、というほど恐いものではなかった。「リング」は映画ではなく1995年作のテレビ版を観ている。男二人が協力して謎を解くサスペンスと思いながら観た。
 ひょっとすると私は恐いからホラーを避けていたのではなく、恐怖映像に不感症なのかもしれない。

 さて、「ヴァチカンのエクソシスト」である。
 エクソシストと言っているのだからホラー映画であるかのようだ。しかし私の勘はホラーではない、と見ていた。いや、だって主役がラッセル・クロウだから。「グラディエーター」で「ビューティフルマインド」で「レ・ミゼラブル」のジャベールがどうやってホラーになるのだろう。
 観てみたら、悪魔に憑りつかれた少年ヘンリーを演じたピーター・デソウザ=フェイオニーのメイクはホラーだった。あれは熱演だったしメイクも素晴らしかった。
 ただ、この映画はラッセル・クロウ演じるベテラン神父アモルトとダニエル・ゾヴァット演じる若き神父エスキベルが協力して難事件に立ち向かうバディものであった。これに一番似ている映画が何か問われたら、私は「フレンチ・コネクション」と答える。

 実際、観た人の感想をネットで調べてみたら、ホラー映画を期待した人の評は厳しい。一方で、ホラー映画ファンではない人が主に褒めていた。
 確かに悪魔祓いの話ではあったのだけれど、題名に「エクソシスト」などとつけなければホラーファンは観に行かなかったのではないか。前宣伝のやり方にも問題はなかったか、などと今にして思うのである。

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