木曜映画サイト 「TINA ティナ」 泥沼の離婚訴訟に至るまで
「TINA ティナ」はティナ・ターナーの自伝「I, Tina」を元に作られた1993年の映画である。現題は"What's Love Got to Do with It"
私はティナ・ターナーの歌をよく聴いていた時期がある。1984年に発表された「プライヴェート・ダンサー - Private Dancer」が好きで、同名のアルバムを買った。それを何度も聴いた。
I'm your private dancer
A dancer for money
私はプライベート・ダンサー
お金のために踊るの
恐らくは娼婦を暗示している曲だ。
このアルバムの中には「I Might Have Been Queen - Soul Survivor」(私は女王だったかもしれない)という曲もあり、バラエティに富んだ曲目が並んでいると思った。
私は当時、「プライヴェート・ダンサー」以前のティナ・ターナーを全く知らなかった。
それがある日、1980年代後半のことだと思う。逸見政孝の番組を見ていた時、逸見氏が
「アイク・ターナーとティナ・ターナーは泥沼の離婚訴訟をした人たちだから縁起が悪い」
と言った。その時初めて、ティナ・ターナーがアイク・ターナーとかつては夫婦で、アイク&ティナ・ターナー というデュオを組んでいたのを知った。
だが、それ以上のことを知ることもなく、ティナ・ターナーの曲をそれ以上聞き続けることもなく、何十年もの時が流れた。ティナ・ターナーは2023年に83歳で亡くなっている。
映画は、ティナの本名であるアンナ・メイ・ブロックの少女時代から始まる。彼女がアイク・ターナーと出会い、アイクのバンドの看板歌手となり、結婚してアイク・アンド・ティナ・ターナー・レヴューとして成功していく様が描かれていた。このバンドは次々にヒットを飛ばした。
そして私生活はと言えば、アイクのDVの嵐だった。ティナに対するアイクの言葉での罵りから拳による暴力まで、映画では痛々しく生々しく再現していた。アイクは麻薬にも手を出していた。
アイク役をローレンス・フィッシュバーンが演じていた。ティナ役はアンジェラ・バセットが演じている。どちらも実物にはあまり似ていない。ローレンス・フィッシュバーンは後にマトリックスでモーフィアスを演じる。その見た目が実物のアイク・ターナーよりもコワモテで、DVの場面は見ていて実に恐かった。
二人が結婚中の間、ティナはアイクの前妻との間に出来た息子二人と自分の息子二人(前夫の子とアイクとの子)を仕事をしながら育てていた。
二人の結婚は1960年。ティナがショーの直前にDVを受けて逃亡し、それをきっかけにグループを解散するのが1976年。同年ティナが離婚訴訟を起こした。ティナは16年の間ずっとアイクからDVを受けていたと主張している。和解が1978年。アイク&ティナの金銭と権利についてはティナが譲歩し、その代わりティナ・ターナーという芸名をそのまま使い続けることが和解内容として決まった。
その後、ティナ・ターナーはソロ歌手として活躍することになる。前述の通り、私が彼女の歌を聞いたのはソロ歌手となってからだ。
前述の通り、この映画はティナ・ターナーの自伝を元に作られている。アイク側の主張はない。
気になったことがある。なぜアイクはDVをするに至ったのだろう。そういう男だ、では説明にならない。
私は二つの恐怖があったのではないかと推察する。アイクは前妻に逃げられている。この目の前にいるティナも逃げてしまうのではないか。もうひとつ、アイクの作った曲をティナが歌うことでアイク&ティナ・ターナーの曲は売れた。だがティナは、アイクの曲でなくても売れるのではないか。
それではどうすればティナを縛り付けておけるのか。
古今東西、男が女に優れたところは腕力しかない。そして、ある種の人間は、相手を思い通りにしようとした時に腕力に頼ろうとする。
同情の余地などない馬鹿な話である。馬鹿な話なのだが、どこか私は、そうした行為に陥ってしまう人に、なにがしかの哀しさを感じてしまうのである。
この映画のラストでティナ・ターナーは映画の原題にもなっている歌、"What's Love Got to Do with It"を歌う。これも「プライヴェート・ダンサー - Private Dancer」に入っている曲だ。邦題は「愛の魔力」。
What's love got to do,
got to do with it
愛って何?
それが何だって言うの
アイクとティナの間に愛はあったのか、と言えばあったのだろう。だが映画の後でこの曲を聞くと、愛が、それが何だというの、という言葉が重く響くのである。
私はティナ・ターナーの歌をよく聴いていた時期がある。1984年に発表された「プライヴェート・ダンサー - Private Dancer」が好きで、同名のアルバムを買った。それを何度も聴いた。
I'm your private dancer
A dancer for money
私はプライベート・ダンサー
お金のために踊るの
恐らくは娼婦を暗示している曲だ。
このアルバムの中には「I Might Have Been Queen - Soul Survivor」(私は女王だったかもしれない)という曲もあり、バラエティに富んだ曲目が並んでいると思った。
私は当時、「プライヴェート・ダンサー」以前のティナ・ターナーを全く知らなかった。
それがある日、1980年代後半のことだと思う。逸見政孝の番組を見ていた時、逸見氏が
「アイク・ターナーとティナ・ターナーは泥沼の離婚訴訟をした人たちだから縁起が悪い」
と言った。その時初めて、ティナ・ターナーがアイク・ターナーとかつては夫婦で、アイク&ティナ・ターナー というデュオを組んでいたのを知った。
だが、それ以上のことを知ることもなく、ティナ・ターナーの曲をそれ以上聞き続けることもなく、何十年もの時が流れた。ティナ・ターナーは2023年に83歳で亡くなっている。
映画は、ティナの本名であるアンナ・メイ・ブロックの少女時代から始まる。彼女がアイク・ターナーと出会い、アイクのバンドの看板歌手となり、結婚してアイク・アンド・ティナ・ターナー・レヴューとして成功していく様が描かれていた。このバンドは次々にヒットを飛ばした。
そして私生活はと言えば、アイクのDVの嵐だった。ティナに対するアイクの言葉での罵りから拳による暴力まで、映画では痛々しく生々しく再現していた。アイクは麻薬にも手を出していた。
アイク役をローレンス・フィッシュバーンが演じていた。ティナ役はアンジェラ・バセットが演じている。どちらも実物にはあまり似ていない。ローレンス・フィッシュバーンは後にマトリックスでモーフィアスを演じる。その見た目が実物のアイク・ターナーよりもコワモテで、DVの場面は見ていて実に恐かった。
二人が結婚中の間、ティナはアイクの前妻との間に出来た息子二人と自分の息子二人(前夫の子とアイクとの子)を仕事をしながら育てていた。
二人の結婚は1960年。ティナがショーの直前にDVを受けて逃亡し、それをきっかけにグループを解散するのが1976年。同年ティナが離婚訴訟を起こした。ティナは16年の間ずっとアイクからDVを受けていたと主張している。和解が1978年。アイク&ティナの金銭と権利についてはティナが譲歩し、その代わりティナ・ターナーという芸名をそのまま使い続けることが和解内容として決まった。
その後、ティナ・ターナーはソロ歌手として活躍することになる。前述の通り、私が彼女の歌を聞いたのはソロ歌手となってからだ。
前述の通り、この映画はティナ・ターナーの自伝を元に作られている。アイク側の主張はない。
気になったことがある。なぜアイクはDVをするに至ったのだろう。そういう男だ、では説明にならない。
私は二つの恐怖があったのではないかと推察する。アイクは前妻に逃げられている。この目の前にいるティナも逃げてしまうのではないか。もうひとつ、アイクの作った曲をティナが歌うことでアイク&ティナ・ターナーの曲は売れた。だがティナは、アイクの曲でなくても売れるのではないか。
それではどうすればティナを縛り付けておけるのか。
古今東西、男が女に優れたところは腕力しかない。そして、ある種の人間は、相手を思い通りにしようとした時に腕力に頼ろうとする。
同情の余地などない馬鹿な話である。馬鹿な話なのだが、どこか私は、そうした行為に陥ってしまう人に、なにがしかの哀しさを感じてしまうのである。
この映画のラストでティナ・ターナーは映画の原題にもなっている歌、"What's Love Got to Do with It"を歌う。これも「プライヴェート・ダンサー - Private Dancer」に入っている曲だ。邦題は「愛の魔力」。
What's love got to do,
got to do with it
愛って何?
それが何だって言うの
アイクとティナの間に愛はあったのか、と言えばあったのだろう。だが映画の後でこの曲を聞くと、愛が、それが何だというの、という言葉が重く響くのである。
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